【第5期】第5回 日本を視座に韓国・北朝鮮・中国・ロシアなどの各国関係の現状とその展開



李燦雨です。名前にあるまんなかの文字は「燦々」の燦。光と雨でなにをつくるか、米ですね。東アジアの文化。日本に来たのは1994年の新潟。当時はコシヒカリの存在をしらずにやってきました。名前を説明すると紹介をうけたんですね。コシヒカリよりはおいしくなろうとおもって日々じぶんを磨いています。みなさん一人ひとり、課題があるとおもいますが、わたしにとってはコシヒカリに勝ること。
今日のテーマは朝鮮半島を取り巻く近未来です。

日本は日本、アメリカはアメリカ。それぞれじぶんの国を中心にして世界を見ますね。今日は視点をずらして、朝鮮半島、中国、台湾に焦点をあてます。
朝鮮半島の南北問題。北朝鮮、金正日の健康問題や跡継ぎのニュース。韓国、いつのまにか発展国になって、たくさんの観光客、韓国俳優が日本にはいってきますね。韓国はいまや、日本のGDPに追いつこうとしています。日本人特派員記者が好む場所、一番はワシントン、二番はソウル。ある日、ソウル駐在経験をした記者がこう話していました。「東京とちがって、ソウルは毎日変わる。いつ戦争になるかわからない。ぴりぴりした雰囲気がある」そんな状態なんです。

国際関係もマーケティングとおなじです。問題認識と解決手段、そして目標がある。
1950年からはじまった朝鮮戦争は停戦状態、三八度線で区切られている。北朝鮮からみると、韓国は傀儡政権——アメリカの操り人形だ!とおもっているんですね。かれらの目標は自主統一。問題は韓国といっしょになっていないこと。解決するためにはアメリカと戦って勝つことなんだけど、現存の武器だけでは勝てない。だから、核開発となる。彼らの論理からすると、手段としての核開発はなんにもまちがっちゃいません。これがアメリカ・韓国・日本から見ると核問題そのものが問題になる、北朝鮮にとっては核問題は「手段」なのに。「問題」の認識が立場によってちがってくるわけです。立場が、国なのか個人なのかによっても「手段」「問題」の認識はかわってきます。

2010年9月にシャープ在韓米軍司令官が「8月に米軍と韓国軍で共同軍事訓練をした。北朝鮮が『崩壊』したときを想定して、社会組織を安定化させる作戦も同時並行で訓練をした」とわざと北朝鮮の建国記念日に発表しました。——北朝鮮よ、あなたたち、ちゃんと聴きなさいよ——という恫喝です。対話の場がもたれていますが、北と南とでは目標がことなりますから、いつまでたっても対話は平行線をたどりますよね。

中国は変わりました。昨年7月に胡錦濤主席を主任とする「朝鮮半島問題小組」というワーキンググループが設置されました。国連の北朝鮮にたいする経済制裁に同調するときめたことは国益からみて外交失策だった、と結論づけました。その後の昨年8月から、北朝鮮との関係改善に努めます。
日本から見ると「なんじゃこれ」ですが、中国の言い分はこうです——アメリカの東アジア政策が北朝鮮を端緒にして、中国を追い込む戦略であるということがわかった。だから、自国が不利になるような戦略には乗らない、と。

第一列島線と第二列島線。中国の視点から見ると、第一列島線は中国防衛の生命線としてとらえている。このなかには入っちゃいけないよということ。第二列島線は第一列島線を保護する役目。この海域までは中国海軍潜水艦がウロウロしている。もし、アメリカと開戦したら、上記二つの列島線を基準に作戦をたてるでしょう。
日本もおなじことを120年前におなじことをしていましたね。日清戦争前は朝鮮半島が防衛線。日ロ戦争前は満州国が生命線。見る眼がちがうだけで、論理がちがうだけ。ここに正義・不正義はありますか?国際関係とはなにかをかんがえるのに、ほんとうによい図です。

2009年8月からアメリカと北朝鮮との間で関係改善をしようと動きがありました。同じ月に韓国でも「朝鮮半島・新平和構想」という宥和政策発言がありました。南北朝鮮の間に南北首脳会談を模索する非公式の会談をシンガポールでやっていたんです。が、今年にはいってガラッと変わったんですね。なぜか。それは、アメリカの国防総省が国務省のうごきにたいして反旗をあげたからです。ブッシュ政権とちがって、国防費削減の圧力がオバマ政権からかかった。おもしろくないから、その打開策としてオバマ潰しを計画しました。それが2010QDR。軍事費維持の理由を中国海軍の伸長に設定し、韓国・日本・オーストラリアに軍備強化を求めました。ただ、アメリカ国債を買いつづけているのは中国。中国を直接刺激せず、かつ軍事費維持にたいしてほどいい役割を演じてくれるのはどこか、こうして北朝鮮がえらばれます。「統合エアシーバトル」——沖縄普天間基地はこの戦略のなかに組みこまれていました。普天間移設問題のまえにこういった文脈があったので、鳩山さんがどれだけがんばっても状況をかえることが無理な環境が整っていたんですね。
2010年4月、天安鑑の沈没事故がおこったあとに、日本政府は外交青書をだす。アメリカの主張とほとんどおなじ内容です。

陸上自衛隊はこれまで伝統的に、ロシアにたいする防衛をかんがえて東北地方周辺に展開していました。今年の防衛大綱でその陸上自衛隊のあり方が、かわってくる。アメリカ軍と協働できるよう、西南の島々に展開します、と検討されています。このように、日本もアメリカの同盟戦略にあわせて戦略をかえているわけです。
本日9/18は満州事変が発生した日。中国は、アメリカ・日本・韓国による圧迫戦略にたいする抗議の意味をこめて、漁船拿捕にこだわったり、丹羽大使を深夜を含め4度もよびだしをかけています。「天安鑑事件をだれがおこしたかは、もはや重要ではない。事件後の一連の動きは米韓の挑戦である、米中の戦略ゲームが始まっている」中国政府の見解です。
中国にしてみれば、いまの朝鮮半島をとりまいている緊張状態はもはや米中間での対立という認識をもっている。はじまりは南北の間でのいざこざだったかもしれない。けれど、そのあとの流れは朝鮮戦争がそうだったように、北朝鮮と韓国の問題ではなく、自国とアメリカとの問題としてとらえているんですね。

天安鑑事件はバブルジェットという高度な攻撃手法と発表されました。しかし、この手法は過去にアメリカ軍とオーストラリア軍が実験的におこなったものがあるだけで、実戦使用はありませんでした。事件発生時は米韓の共同軍事訓練があって、周辺海域には高性能レーダーをそなえたイージス艦も大中様々な軍艦もありました。その厳戒態勢のなかで、北朝鮮が潜水艇でまんまと海域を縦断して、魚雷をうって、ただ1発で世界海戦上のはじめてのバブルジェット攻撃を成功させ、また発覚されず戻ったというんです。ありえますかねえ。事件後の韓国政府の発表も齟齬をきたすものがおおい。事件発生前後の監視ビデオ録画は残っているが、当の沈没時間のビデオだけは偶然ないという説明があったり。北朝鮮がうった魚雷の設計図、図面になぜか日本語のカタカナがまじっていたり・・・。こういった一連の事実、日本では発表されませんね。韓国政府の発表にたいして北朝鮮・中国・ロシアは反対、アメリカと日本は支持を表明しました。今回の哨戒艦事件はベトナム戦争を拡大させたトンキン湾事件と似ていないか——前アメリカ韓国大使でさえ疑問を呈しています。

よくみると、日本だけがなにもしていない。北朝鮮にたいして支援も対話もせず、崩壊をまっているようです。一種の籠城作戦でしょうか。積極的な対外路線をだす必要はない、という基本方針かもしれないけれど、周辺諸国はうごいています。アメリカも中国も北朝鮮も韓国も、各国の利益を拡大するために活動しているんです。政府に発想をまかせるのではなく、上記のようなことを個人がしっかり発想することが必要です。
六ヶ国会談は近日、再開されるでしょう。キーワードは米中関係。戦略的ゲームのなかに北東アジアはほうりこまれている。わたしたちは、この周辺情勢にたいしてなにをどうやってかんがえ行動すれば、未来、日本が生き残っていけるのか——視点をずらしていろんな角度からみながら、ぜひ真剣に考えてみてください。

久住さんの質問:
日本が緊張状態をのぞんでいる、という見方はかんがえられないのか。戦争が発生することで内需が潤う、という発想を日本政府がもっている可能性はあるのか。

李先生:
集団的自衛権の議論もあるが、日本が合法的に物資を支援することはできる、という法的措置がとられている。問題は、自衛隊が自主的な活動がとれるかということです。やられてもやられたまま。反撃は最小限にしなければならない——そんな軍事活動の規制がある。アメリカ軍にしたがう行動しかとれない。仮に沖縄海域でなにかがおこっても海上自衛隊はなにもおこなえない。アメリカ軍がなにか行動に起こしてくれないと、なにもできないんです。本当の意味での「自主的防衛権」とはなにか、議論を深める必要がある。「これまではアメリカに依存してきた。米朝ゲームで日本をはずしてなにかがおこったら、どうしますか?」この質問にみなさんは答える必要があります。