【第7期】第3回グローバルプロフェッショナルズ 講座記録

2012年7月21日

【開催概要】
■人間力講座
 「先進国市場&新興国市場における韓国企業の躍進から学ぶもの」
 講師:徐 誠敏 商学博士 中央大学商学部講師

■マーケティング講座
 「グローバル市場における経営・マーケティング戦略概念」
 講師:山本 学 山本国際マーケティング研究所代表、中国首都経済貿易大学工商管理学院客員教授、遼寧大学大学院(MBAビジネススクール)客員教授、当スクール校長


1.第3回人間力講座

「先進国市場&新興国市場における韓国企業の躍進から学ぶもの」
講師:徐 誠敏 商学博士 中央大学商学部講師

■CEOブランド
企業のCEO(最高経営責任者)は、歩く「企業イメージの広告塔」である。
CEOが大衆に与えるイメージは企業イメージを左右する。
CEOが強力なリーダーシップとコミュニケーション能力を発揮することで企業価値を高め、他社との差別化を図る。
Appleのスティーブ・ジョブズやGEのジャック・ウェルチ、ホンダ創業者の本田宗一郎らが好例。

■日本の中小企業のブランド戦略

◎事例1.本多プラス(株)
 年商:34億2000万円(平成22年度)
 従業員数:160名
 本社:愛知県

事業内容:
プラスチック製小型容器の製造
大手自動車メーカーの下請けの依頼を断り、自社製品の開発に注力し、零細企業からオンリーワン企業へ発展を遂げた。

経営理念:
「他人のやらないことをやる」
競合他社がやらないことをやる。これぞ戦略の本質である。競合他社に模倣されない価値を生み出し、自社の持続的な競争優位性を確保する源泉である。

強み:
「プロ―成形」技術力 + デザイン力
金型にプラスチックを流し込み、空気を入れて成形する独自の技術で、化粧品ボトル等を製造。
4人の専属デザイナーが顧客に価値提案を積極的に行っている。

なかでも味の素の「うまみ調味料 味パンダストラップ」は日本パッケージデザイン大賞2011にて金賞を受賞し、ブランド知名度・認知度を向上させた。
また、小型の香水瓶は20~30代の女性の間で人気を博した。

代表取締役社長 本多克弘の7つの経営学
①他人のやらないことをやる
②「一寸法師の針」を磨く - 小さくとも他社に負けない
③会社は放っておけば潰れるようにできている
④台風でも倒れない「タコの木」経営を実現
⑤販売なくして事業無し
⑥自分で考え、自分で作り、自分で売る
⑦給料は社長ではなくお客からいただくもの

「デザイン力」「マーケティング力」が発展の秘訣

◎事例2.QBハウス
事業内容:ヘアカット専門店

社名の由来:
QBは「Quick Barber」「Quick Beauty」「Quality Business」といった基本理念や戦略的な意図が込められている。

戦略:
10分でカットを行い、貴重な時間を節約したいと考える顧客を取り込んでいる。
自社を「散髪業ではなく、時間節約産業」と位置付け、時間を効率よく使いたい人をターゲットとした差別化戦略。
効率よいカットを実現するために、独自のシステムユニットを使用。新品のクシを使用し衛生面にもこだわり。

創業者・小西國義氏の言葉:
・常識と思われていることに対して「なぜ?」と思うことが大切。困っていることを改善せよ。困っているところにビジネスがある。
・他社がやらないことをやれ。違いを生み出すこと。
・経営者は、常に物事に対して問題意識を持ち、リスクを冒しても新しいことに挑み続けるべきである。
・成功するうえで高いコスト意識は必要不可欠である。
・過剰な設備投資やサービスではなく、本当に必要とするサービスだけを低価格で提供することが重要。

■戦略的視点から見る日本企業と韓国企業の違い

・韓国の教育:
韓国では教育が重視されており、子供達は幼い時から外国を意識しながら育てられる。受験戦争は激しい。
英語力はもちろんのこと、相手国の文化についても学ぶ。―日本ではこれができていない。
サムスン電子やLG電子など大手企業の入社試験では、TOEICスコア900点以上が求められる。
海外依存度が高い大手企業に就職を希望する場合、外国語をマスターし、国際感覚を養うことが不可欠である。

・韓国企業のグローバル化対策:
カメレオン型現地化の実践
国や地域ごとにそれぞれ異なる言語、伝統、文化、習慣、価値観、生活様式、経済力、環境等があることを踏まえ、その国や地域のニーズに合わせた製品・トレンド、サービスを開発し提供。価格だけでなく、生活事情に合わせたデザイン作りを行っている。
韓国人の駐在員は、現地の顧客とコミュニケーションを取り、彼らのニーズを掴もうとする。

日本企業のグローバル化対策:
日本や欧米の先進国市場の消費者向けに開発した製品をそのまま海外に輸出する「日本流の輸出」が大半で、対象としている市場の消費者のニーズに合わせてものづくりを行う発想はほとんど無かった。
日本企業が新興国で弱いのは、従来の日本のビジネスモデルを変えられず、ローカリゼーションが出来ていないから。
最近の日本企業は、現地の事情に合わせた製品を開発するため、中国・インド・南米などの新興国での研究施設設立を進めている。

韓国式経営スタイル
・経営者
・技術開発
・海外戦略
・広告

日本は今後「カメレオン型現地化政策」を進め、日本の特徴を生かしつつ現地に合わせた製品を作り、更なる現地化を目指すべきである。
日本市場は規模が小さい。世界に目を向けないと売上は伸びない。

■韓国企業の躍進 

◎事例1.サムスン電子
・半導体メモリ、薄型TV、液晶パネル、有機EL、リチウムイオン電子等を製造・販売
・世界71カ国、468事業所で28万人が勤務
・Best Global Brands 第17位。(2011年)
・事業規模:約20兆円、純利益1兆8千億円(2010年)
・世界シェアでトップに立つ製品が20品目以上
・売上高:8.1兆ウォン(1993年)⇒59兆ウォン(2006年) 13年間で7.3倍に増加
・営業利益:日本電機大手9社(パナソニックス、ソニー、東芝、日立製作所、富士通、NEC、三洋電機、三菱電機、シャープ)の営業利益の合計を上回った。(2009年~2010年)

サムスン電子は、約30年間にわたり、品質力・生産力を向上させるために日本企業から技術能力を、吸収→模倣→改良→国際化→革新段階を経て学習してきた。

・1996年 李会長による「デザイン革命の元年」宣言
「デザインこそが企業の哲学や文化を表現し、企業の優位性を左右するという信念」に基づきデザイン経営を重視するようになった。

かつては単に製品を販売する時代だった。

これからは企業の哲学や文化を販売する時代。デザインは企業にとって最も重要な戦略的資産である。

・デザイン部門の海外拠点の拡大
デザイナーが自ら現地のデザイン動向を調べ、営業担当者のミーティングにも参加。
海外向けの電化製品をデザインするために、デザイナーが現地で情報を集め、現地の消費者のライフスタイルを把握する。

現在のデザイン部門の海外拠点
ソウル、東京、サンフランシスコ、ロサンゼルス、ロンドン、上海、ミラノ

「地域専門家制度」:
3年以上のキャリアを持っている若手社員を海外に派遣させ、異なる言語、文化、習慣、
生活様式などを徹底的に身につけさせ、その国・地域の専門家として育てる制度。
現地で使われているモノ、人の行動やニーズを毎日本社に報告している。

「地域本社制」:
日本、米国、中国、欧州、東南アジアの5つの本社がある。
①現地に密着して新しいビジネスチャンスを開拓  
②意思疎通のスピード加速  

世界各国の消費者のニーズを把握するために、地域別に差別化された市場進出戦略(現地密着型マーケティング戦略)を行っている。

「地域専門家制度」と「地域本社制」の利点:
①各国の消費者の潜在的なニーズを的確に把握
②各々の市場のニーズに応じ、必要かつ十分な機能を持つ製品開発を行う
③地域密着型マーケティング戦略と地域密着経営

国別対応戦略の例:
・インド:呼び出し音が大きい携帯電話(騒音の中での利用を想定)
・インド:ソーラー・グルー(太陽電池で充電できる携帯電話)
・ロシア、中国:Duosフォン(2つのSIMカードを使用し、2つの番号を用途別に使い分けることが可能な携帯電話)
・ロシア:アクアスリムフォン(万歩計やカロリー計算機能付携帯電話)

サムスンの文化マーケティング:
ヨーロッパ市場において、スポンサーシップを通したマーケティングを戦略的に展開。
イベントで体感してもらい、購買に繋げる。消費者の心をつかむマーケティングでイメージ向上
ブランド知名度・認知度の向上および プレミアム・ブランド・イメージを広め、2006年から ヨーロッパ市場でシェアを30%アップさせ1位を占めている。

例:
・ロシアの大型コンサートステージの巨大広告
・モスクワ市内の電柱毎に掲げた看板

サムスンのスポーツマーケティング:
・テニス界スターのシャラポワ選手をロシア地域の広報大使に選定。TV,印刷物、インターネット等を通じたマーケティングキャンペーンでサムスンのブランド知名度や認知度向上を目指す。
・マンチェスター・ユナイテッドとチェルシーのユニホームや競技場にサムスンモバイルのブランド広告を使用      

サムスンのオリンピックマーケティング:
・ベッカム選手をロンドンオリンピックの広報大使に抜擢
・2008年の北京オリンピックでは、最先端モバイル技術展示や競技情報のリアルタイム配信を行い、300万人以上が来場

楽しい思い出の中にサムスンを存在させ、良いイメージを定着させる。子供のスポーツ観戦時のサムスンロゴ入りユニフォーム等

ブランドとの共演によるシナジー効果の例:
・ジョルジオ・アルマーニ デザインの携帯電話とTV
・映画「スーパーマン リターンズ」に液晶テレビ、携帯電話、プリンター、モニター等、274台のデジタル製品を提供。アメリカ映画を通じて現地の親近感のあるブランドとして定着
・グローバル広告モデルに世界的なトップスター、ビヨンセを起用

サムスン電子の最大の強み:
モノづくりの競争力+市場づくりの競争力のバランス戦略の実践こそが、日本企業の未来を開く鍵となる。

迅速な意思決定によるスピード経営の実現
常任顧問 尹鐘龍(ユンジョンヨン)による「刺身理論」
「刺身屋とデジタル製品において在庫は致命的であり、スピードがすべてである」

◎事例2.LG電子
総合家電、情報通信メーカー。韓国電機業界ではサムスン電子に次ぐ大企業

経営戦略の特徴:徹底したローカライゼーション(現地化)
製品開発の現地化:インドで文化的特徴を考慮して製品開発
経営と人材の現地化:インドで販売や人事などの経営をインド人、生産と財務を韓国人が担当

・インド:鍵付冷蔵庫(メイドによる食料盗難防止対策)
・ロシアやヨーロッパ諸国:幅が狭く高さのあるスリム型の冷蔵庫(長身の人向け)
・中国:赤い冷蔵庫(中国人は赤色を好む)
・イスラム圏:メッカフォン(メッカの方向や日程を知らせる機能付携帯電話)
・イスラム圏:コーランを読み上げる携帯電話とTV
・インドネシア:蚊を麻痺させるエアコン

ブランドとのコラボ:『プラダフォン』 全世界で700万台を販売

◎事例3.現代自動車
2009年以降、世界での販売台数を急速に伸ばしている。
2009年北米カー・オブ・ザ・イヤー受賞

ブランドとのコラボ:『ジェネシスプラダ』 希少性を高めるために国内で1,200台限定販売。 4日間で100台契約
各車に「シリアルナンバープレート」を付けるなど、少数の顧客向けプレミアムVIPマーケティングを展開

国別対応戦略:
インド市場向けには低価格の最新モデルを投入
中国向けには小型車「K2」。販売台数を伸ばし続け、同社の中国販売車1位に。

韓流ドラマ・K-POPを用いたマーケティング
韓流ドラマとK-POPは、東アジアだけでなく、欧米や中南米諸国でも人気がある。
韓国政府の強力なバックアップのもと、サムスン電子をはじめとする韓国企業は、文化マーケティングとしてこれらを戦略的に活用している。

製品+K-POPのコラボレーション例:
・日本でドコモより発売されたLG製スマートフォンのCMキャラクターに人気グループのKARAを起用
・香港の路線バスの車体全面にサムスンの広告
・中国でのサムスンのTV広告に人気グループ 少女時代を起用

韓流文化の海外展開

海外の会社やアーティストとのコラボレーションで市場拡大

韓流のイメージが向上し、付加価値を共有
「韓国製品はかっこいい」「センスがいい」といった良いイメージを与え、ブランド力を高める

■日本企業の今後の課題

①品質力・技術力 + デザイン力・マーケティング力
マーケティングを企業の中心に位置付け、社員一人ひとりがマーケティング戦略の専門家になる

②攻めの現地化
各国の言語、習慣、価値観、文化、生活様式、環境などに合わせたものづくりと市場づくり

③市場の変化に対応
市場の変化を重視しつつ、新しい価値・情報・知識・技術などを市場から学ぶ体制を整える

「チャレンジして失敗を恐れるよりも 何もしないことを恐れろ」 本田 宗一郎


2.第3回マーケティング講座
「グローバル市場における経営・マーケティング戦略概念」

 講師:山本 学 山本国際マーケティング研究所代表、
  中国首都経済貿易大学工商管理学院客員教授、遼寧大学大学院(MBAビジネススクール)客員教授、当スクール校長

人生・生き方 = マーケティング
人は生まれた時からマーケティング。赤ちゃんは何か欲しければ泣く ― Human Behavior

経営とマーケティングは人生のプリンシプル
まずはニーズを見つけよ
そして顧客を満足させよ
顧客の脳みそに働きかけないとモノは売れない

市場の構造
・人口構造
・需要構造
・競争構造
・情報構造
・経済構造
・文化構造
・社会構造

経営マーケティングは
モノ 1.0
顧客 2.0
ハート 3.0

戦略の6ステップ
Step 1:経営戦略(商品戦略)
Step 2:競合市場戦略
Step 3:顧客戦略
Step 4:商品ポジショニング戦略
Step 5:戦略ポジショニング戦略
Step 6:マーケティングアクション戦略

・顧客は誰か?
・価格は?
・モノは何か?
・自分が得意なものは何か? 考えてみる

「プロモーション」は一方通行なので最近は使わない
今は「コミュニケーション」
Even Value

お客様が何を求めているかを知り、需要と供給を結び付ける
データを分析・加工し情報化する ⇒ 知恵を蓄積する
自分が持っている認識でチャレンジし、自信があれば相手のもとへ行け
自分自身がブランドになる

経営とは利益を創出するもの。マーケティングと切り離せない
ビジネスの世界では勝つか負けるか。1位、2位、3位といった順位付けではない

若い時に3度の食事を2度にしてでもお金を貯めて世界を旅せよ
この場所で商売をしたいと思ったら、徹底的にマーケティングを学ぶと人のハートを掴むことができるようになる

新しい価値を創出し、お客が想像もしないことを与える
生活者の視点から何が必要か考え、商品と消費者を結び付ける
未来を見て、財務諸表の裏にあることを見つける
差別化を図る
市場とコミュニケーションをとる

自分が考える「マーケティング」を3分間でアカデミックかつロジカルに、
具体例を交えて説明できるようになれ
 
後半は参加者全員が自分にとってのマーケティングを発表した。


感想   

徐先生のプレゼン資料のボリュームと、勢いのある語り口に熱意を感じ、大変刺激を受けました。             

「韓国企業のマーケティング戦略」という興味深いテーマで、事例を多数交えた説明は勉強になり、          

早速自分の仕事に生かせる部分から取り入れたいと思います。             

             

後半の山本先生によるマーケティング戦略の講義では、改めて自分にとってのマーケティングをじっくり考える      

良い機会となりました。参加者全員のマーケティング概念を聞くことができ、参考になったとともに          

ユニークな発言も多く、優秀な人が多いと実感しました。