2012年11月17日

【開催概要】
■人間力講座
「イノベーションと成長を加速するリーダーシップ – 発明家トーマス・エジソンが設立したGEのケーススタディから」
 講師:田口 力 ゼネラル・エレクトリック・インターナショナル
  クロトンビル・リーダーシップ ジャパン マネージャー 

■マーケティング講座
 「ヒューマン・センサード・マーケティング」
  講師:安田 尚司 大日本印刷株式会社
   包装事業部企画本部リサーチ&プランニング戦略室
   ヒューマンリサーチセンターチームリーダー


1.第7回人間力講座

「イノベーションと成長を加速するリーダーシップ – 発明家トーマス・エジソンが設立したGEのケーススタディから」
講師:田口 力 氏

~午前の部~

【午前の部】
1. ビジネスパーソンにとって大切なもの
– ビジネスパーソンにとって大切なものは、「skill(技能)」ではなく「will(意思)」。「will」がなければ「skill」は身につかない。
– 「Ability(能力)」、「Motivation(やる気)」、「Opportunity(機会)」。これら3つの掛け算が「Performance(成果)」。どれかがゼロだと、全てがゼロとなる。
– もう一点、最近気付いたこと。仕事をする上では「楽しむこと」が重要。
「deliverable(期待を上回ること)」=「doable(単に実行すること)」×「enjoyable(楽しむこと)」。以前私は、「参加者にどのようなスキルや気付きを与えられるか」と常に考えていたが、ある時 「教える自分が楽しまなければ、参加者も楽しめない」と気が付いた。それ以降、講義スタイルを変え、3年連続で最高評価を獲得している。

2. 現代の日本
– 長く海外にいると、日本に対する危機意識を強く感じる。今、成長著しいアジアは風速40mくらいの勢いがある。他方、日本は台風の目にいるように静かだ。
– 日本には飢えがない。飢えがないから這い上がる気力もない。これが未来に向かって輝くための原動力だが、風が吹かないところにエネルギーは発生しない。日本はもう20年もこの状態が続いている。皆さんにも、海外に住んで仕事をすることをお勧めしたい。

3. クロトンビル
– 一般的に企業では、人材育成は「コスト」と考えられている。しかしGEでは、「投資」。更にクロトンビルは、企業内大学でありながら収益を上げることが求められている。
– クロトンビルでは、各部署に対し、教育のラインナップを策定して示す。これを見て、各部署が社員を選抜し、クロトンビルに受講料を支払って教育を受けさせる。もし「効果がない」と判断されれば、受講者がいなくなり、収益を上げることができなくなる。私は就任初年度から、黒字化と研修受講者数の過去最高記録を達成した。
– なお「投資」である以上、無駄なことはしない。クロトンビルの教育を受けられるのは、選抜された社員のみ。やる気の無い者は受講できない。これにより、「投資」を最大化することができる。

————————————————————————————————–
~午後の部~

4. グループワーク「強いグローバル企業の要件とは?3つのキーワードで答えよ」
(1) 発表
発表者① 人材、戦略、組織
発表者② ブランド力、マーケティング力、ローカライズ力
発表者③ 現地化、知名度、先見性
田口講師の答え 人、文化、メカニズム
(2)田口講師よりアドバイス
① 結論を先に言う。前置きが長いのは、日本人、韓国人、中国人の悪いところ。
② キーワードで分かりやすく伝える。長い言葉では伝わりにくい。
③ 自らの発言の価値を下げる「Discount Word」は絶対に言わない。

5. Self-Awareness
– 日本の教育では、強みよりも弱みに注目し、これを基準値まで上げることが大切とされる。しかしこれは、「投資」の観点からは誤り。大切なのは、自らの強みを更に引き上げ、限界点を超えるくらいにまですること。これが人間的な魅力となる。
– GEの前CEOジャック・ウェルチは、「なぜ20世紀最高の経営者になれたのか」というインタビューに対しただ一言、「Self-Awareness」と答えた。己を知ることが何よりも大切。

6. GEのリーダーシップ
– GEには、新しく入った人材を短時間で成長させるための文化とメカニズムがある。やる気のない人材は外科的に排除する。“ If you stop learning, you have to leave GE.”
– GEにおいてリーダーとは、「結果を出し続ける変革者」。ウェルチは、その要素として次の4つを挙げている。
① Energy:自らが活気に満ち溢れていること
② Energize:目標に向かう人々を元気付けられること
③ Edge:タフな問題に対しても決断ができること
④ Execute:言ったことをとことんまで実行すること


2.第7回マーケティング講座

「ヒューマン・センサード・マーケティング」
 講師:安田 尚司 氏

1. PCMからHCMへ
– これまでは、コストや効率が重視されてきた(PCM=Product Centered Marketing)。しかし、調査で「どこで」、「何が」売れたのかが分かっても、「誰が」、「何と比較し」、「何故購入を決断したか」という重要な点が分からない。消費者の行動プロセスの中にこそ、ブランドや商品の真の価値がある(HCM=Human Centered Marketing)。
– あるCMを対象に、人がどのような行動を取るか調査を行った。分かったことは
ヒトは、動きに対し反応し、ヒトの顔に目を向けるということだ。従って、ヒトの行動に沿ってデザインやレイアウトをしないと、効果的な行動につなげられないということが分かった。

2. ヒトの情報処理特性
– ヒトは、外界の刺激→感覚器官→脳での処理→反応、という順で情報処理を行っている。知覚し、認知し、これまでの経験から予測、判断を行う。最も大切な情報は視覚。しかし、ヒトの視野は120度あるが、その中心視は親指の爪ほどの広さしかない。
– また、全てのことを長く記憶する力はない。記憶には短期記憶と長期記憶があるが、商品を印象付け覚えてもらいたい場合は、「単純接触効果」、「系列位置効果」等の理論を利用する必要がある。
(参考)いかに人間の中心視が狭いかを試す実験。是非お試し下さい!
http://www.awarenesstest.co.uk/ “Basketball awareness test”

3.「親近性」と「新奇性」
- 「親近性」:予測通りの情報。好意を感じる。大人はこちらを選ぶ傾向がある。
- 「新奇性」:脳が刺激される情報。ドーパミンが放出される。子供は新奇性優位。
パッケージのデザインは好意を持たせる「親近性」が重要だが、飽きられないための「新奇性」を常に打ち出していかなければならない。
① どれだけ、早く注意を向けさせるか
② どれだけ、強く近くさせるか
③ どれだけ、素早く認知・価格予知させるか
④ どれだけ、予測外のことを起こすか
– 今後は更に、ピンとくる」、「なんとなく」、「思わず」といった曖昧な心の動きを科学で解き明かしていきたい。


議事録担当:勝村 良子