第12期第1回目の議事録

第1回GP議事録(2017年5月13日)

■第1部「日本企業のための新グローバル戦略」

講師:森辺一樹 様 スパイダー・イニシアティブ株式会社 代表取締役

●講義のポイント

1:日本企業が海外市場にうまく進出できていないのはなぜか?
2:外資系企業の進出状況はどうなのか?
3:日本企業はどうすればうまく進出できるようになるのか?

●ものづくりで勝ち、チャネル作りで負ける日本

・日本には高い技術力やMade in Japanの品質があるが、マーケティングがないのが課題。
「商品が良ければOK」が正しければ、大手メーカーが不振になるようなことは起きないはず。

・商品の機能と価格のバランスで見たとき、日本の商品のポジショニングは厳しい。
日本の商品は機能が高く、価格も高い。
欧米はブランド作りがうまく、日本ほどの機能をつけず、日本より高い価格で売る。
中国・韓国は日本ほどの機能をつけず、価格も低い。
すると、金持ちは欧米のものを買い、そうでない人は中国や韓国の商品を買う、となってしまう。
「日本製だから欲しい」と思っても、そこから「買おう」にはならない。

・戦後は日本で商品を作り、海外へ商品を輸出してきた(stage1)。
1985年プラザ合意で円高になると、今後は中国やアジアで商品を製造し、
日本や欧米に輸出するようになる(stage2)。
2000年代に入り、中国やアジアが成長し競合になり、
現在は中国やアジア市場でいかに販売するかが求められている(stage3)。
stage1~2では「先進国」がターゲットであり、「技術力(作る力)」が求められたが、
stage3では「新興国」もターゲットとなり、「マーケティング(売る力)」が求められる。
「作る力」より「売る力」、「ものづくり」以上に「チャネル作り」が重視される。

●世界を牛耳る10大メーカー

・世界の10大メーカーは、現在外資系企業で成り立っている。成功のポイントは以下の3点である。

1)市場規模を最大化するための「中間層ターゲティング」

欧米メーカーは「最大ボリュームである中間層を狙い、そのターゲットに向けて商品設計や価格設定を行う」
という戦略がぶれない。中間層を狙わないと進出する意味がないと考えている。
日本は、日本向けの商品をあまり変えず、まず上位中間層や富裕層から狙おうとなりがち。

2)ストアカバレッジを上げるための「戦略的チャネル構築」

アジアには近代的小売(デパートなど)と伝統的小売(パパママショップ)があり、伝統的小売の数が圧倒的に多い。
近代的小売だけでは儲からないので、いかに伝統的小売にモノを置くかが重要で、欧米はここにコストを投資している。

3)インストアマーケットシェアを上げるための「戦略的プロモーション投資」

「店に並べる」と「消費者の手に取らせる」は別。いかに多くの人に、いかに早い頻度で、
いかに繰り返し買ってもらうかが大事。
欧米メーカーは、お客さんにいかに他社品より手にとってもらうかを考え、最適化している。

●これからの新グローバル戦略

これまでの日本の「モノ(製品/商品)頼りの海外展開」「現地パートナー頼りの海外展開」
「駐在員の質頼りの海外展開」では、成功しない。
輸出ビジネス→輸出型チャネルビジネス→現地現産型チャネルビジネスへ移行していくことが必要。

自分たちが売りたい商品ではなく、アジアの中間層が求める商品を、買える価格で、
買いやすい場所で、選びたくなるような売り方で売ることが重要。

■第2部「企業人としてあるべきヒューマンマインド」

講師:山本 学 山本国際マーケティング研究所 所長

●プロフェッショナルとは?

・プロの究極は「スペシャリスト」であり「ゼネラリスト」であること。
1つだけ卓越しているのでは、この世の中ではやっていけない。
ゼネラリストであるには、全てのことへのチャンレンジマインドが必要。そして健康であること。

・1つのことでトップであること。
それをサポートするために社会・経済・AIなど、世の中のことを勉強する。

・コミュニケーションを高いレベルで持てるようにする。ライフデザインをクリエイトできるようにする。

・英語はできて当然。どのような状況下でも、どのようなメンバーでも、
どのような国へ行ってもフィードバックできること。

・(自分は)何についてのプロの存在になっているのか?すぐに見つけること。

・Action Now!

・人に会えば問題解決できるわけではない。具体的なアクションをしなければ意味がない。

・直面している問題意識は何か?その課題に対して、最適な人物、知識、情報、場所、時間を見つける。

・自分の時給の価値を決められるくらいにする。低ければ高めていく。自らの価値を評価する。
自分は「賢い」と思うと、周りもそう思う。自分は「アホ」と思うと、周りもそう思う。
自分のプライドを持ち、評価する。

・市場はスピーディに変わる。今日のお客さんが明日のお客さんではない。

・人生のSWOT分析を行う。見るものは4つのうち2つでよい。強み・長所を見ること。
強みを磨けば、弱みは消去される。弱みばかり見ると強みが消えてしまう。競争相手の強みも見る。

・consciousとintelligenceをものにできればOK

■第3部「戦前の暮らし『月給100円サラリーマン時代』」

講師:岩瀬 彰様 NNA 代表取締役

「月給100円サラリーマン」の時代:戦前日本の<普通>の生活をちくま文庫より再刊

●戦前はそれほど現在と隔絶した社会だったのか?

・それほどでもない。「サラリーマン根性」とか「学歴信仰」「お受験」などは現在と全く同じ。
農村は貧しかったが、都市が真っ暗だったわけではない。

●日本の国力はどの程度だったのか?

・人口は、昭和5年で今の半分(約6,400万人)だったが、当時の政府は過剰と考えていた。
GDPは米国の7分の1、世界貿易に占めるシェアは約3%。第一次産業従事者が全体の約50%(現在は約5%)、
第3次産業は約30%(現在は約70%)、ホワイトカラーは就業人口全体の10%以下であった。

・現在との物価の差は約2000分の1。当時の地下鉄銀座線は全線10銭=現在の200円、
円タク=現在の2000円、天丼30銭、もりそば10銭、ビール35銭、清酒(並)1円、映画館1円、
文芸春秋50銭=現在の1000円。物価を見ても、それほど今と相場(物価水準)は変わらない。

●100円がサラリーマンの平均月収

・大学生は圧倒的なエリートであり、現在よりはるかに厳しい学歴格差があった。
7割が高等小学校(現在の中学校)卒業。3割しか進学しない旧制中学(現在の高校)はすでに高学歴。
初任給から学歴格差があり、昇給にも学歴格差があった。「どうしても中学だけにはやらねば駄目だ!」
という通信教育の広告があった。

・当時も「最近の若いやつはだめだ!」と言われていたが、ここでだめだと言われてきた人が
日本の高度経済成長を支えてきたので、若い頃言われることはあまり関係ないだろう。

・人々は戸建てに住み着物で和食を食べる生活。洋服は貧乏くさいと思われ、
高価で機能的でない和服を着ていることが豊かさの象徴だった。
7~8割は借家住まい。集合住宅は存在しなかった。

●戦争が景気対策

・サラリーマンとしての軍人が存在し、「やりくり中尉、やっとこ大尉」と言われていた。
民間サラリーマンより給料は低水準。戦時体制になると各種手当てが出た。
当時は、学歴の有無、地方-都市、男-女など様々な格差が大きかった。
「拡大する格差を是正する最大の方策は戦争を支持することでした。別の言い方をすると、
当時は戦争が景気対策だったのです」(井上寿一)という声もあった。

●終わりに

・人間の本質は現在も80年前もそう変わらない
・収入や学歴の相場を頭に入れておくことは重要
・それがないと国際比較も歴史的比較もできない
・「戦前の人間は凛としていた」といった感覚的な言説は根拠が薄いが、反論するには膨大なデータが必要