第8期第6回目の講義議事録

第6回グローバルプロフェッショナルズ 議事録
日時:10月19日(土)10:30~18:00

 

「オムニチャネルリテイリング」
講師:藤野 直明 野村総合研究所 主席コンサルタント

・購買行動、プロセスの変化とオムニチャネルリテイリング
ITの進化やスマートフォンの普及などによって、購買プロセス中でチャネルが変化していく現象が発生している。その中で、顧客と企業の施策間でマルチタッチポイント化が進んでいる。また、商品の購入に対して事前の調査や製品の比較などに多くの時間を費やす顧客が存在し、それらの顧客は購入確率や購買額が多いことが知られている。つまりロイヤリティの高い顧客と呼ぶことができ、それらの重要顧客囲い込み戦略がオムニチャネルリテイリングである。
・「単なるモバイルチャネル対応はオムニチャネルリテイリングではない」
日本でもオムニチャネルリテイリングを導入した企業は多いが、店頭顧客のための施策と考えてしまう等の誤解によって課題を抱えている。
・顧客の心の変化とおもてなし
「店舗」→「ブランド」へ顧客の関心が移行している。顧客の心をとらえるにはブランドと顧客の1対1の関係を如何に築くかが重要となる。そこで重要となるのがおもてなし力である。おもてなし力には「タイミング」「あなただけ」といった要素が重要であり、それらによって必ずしも直接的な購買行動ではない、顧客の関心の枠を広げることで満足を提供することが重要である。
・オムニチャネルリテイリングとは
本質である顧客の心をとらえることを目的とし、タッチポイントに関係せずに顧客に統一的な購買体験を与える概念である。そのため、組織の縦割りではなく、横串型で管理をしていくことが必要である。店舗といった既存のチャネルに縛られることなく顧客にとって必要なタッチポイントを構築することが重要である。なお、現在日本において、マルチタッチポイントのマーケティング組織のある企業はほとんどない。
・オムニチャネルリテイリングに対応するための課題
①システム:業務・チャネルごとにシステムやデータベースが乱立
②推進組織:社内での事業(Web vs 店舗等)の競争状態や経済効果が明確でないと社内での投資が進まないこと

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「消費者とブランドをつなぐ次世代コミュニケーション プラットフォームとオムニチャネル実装例」
講師:坂田英宣  ㈱電通レイザーフィッシュ テクノロジー部 テクノロジーダイレクター

・オムニチャネルに注目する理由
店舗やWebといったチャネルではなく、ブランドを売ることが重要である。消費者の行動の変化(スマホ中心の生活等)により従来の方法での情報提供が意味をなさなくなってきている。

・世の中の3つの変化
①データ(ビッグデータ)
ソーシャルメディア等、企業の知らないレベルで莫大な情報が作成されている。それらの約80%を占める非構造化データにユーザーのニーズやウォンツが含まれている可能性がある。
②テクノロジー
ガラケーと比較してスマホは情報量・質ともに優れている。近年の技術の進歩は新たなチャネルを創造している。「REVEL」と名付けられた技術は、電気信号により画像や実物体に人工的に触覚を生成する。また「kinect」という音声・ジェスチャー認識システムも存在する。それらの技術は、自宅に居ながら従来は店舗でしかできなかった試着や通信販売商品の質感確認等の新たな体験を可能にする。
③世代
今後顧客となる世代の消費行動は、現在対象としている顧客のものと異なる。どのような価値をどのようなチャネルで提供するかが重要である。
・各企業の近年の取り組みについて(機密事項があるため企業名は書いておりません)
●デパート
デパート内にオンライショッピングスペースを配置→Web vs 店舗の縦割りをなくし、より安価で買いたいという顧客ニーズをかなえる
フリーWiFiサービス→店内の滞在時間を延長
Click and Collect Service(オンラインで買って、店舗に受け取りに行くサービス)→多数保有する店舗を利用し、顧客の簡便性向上、時間節約
●テレビメーカー
店舗のテレビの前に説明用のタブレット配置→顧客にとっては、製品の比較をすることができ、企業にとっては顧客がどのような機種や機能を比較しているかのデータを入手することができる。
●自動車メーカー
「車を買う」体験がありきたりのものになってしまっている。ビジュアルとタッチパネルを利用した技術によりカスタマイズする喜びを醸成。上記のテレビと同様に、顧客の選択経緯を知ることによって、ニーズ把握ができる。
●携帯電話メーカー
携帯電話自体ではなく、携帯電話等のデジタルデバイスの真の価値をつたえる。携帯電話によって自宅鍵の施錠や犬のえさやりができるデジタルライフをプロデュース。
上記のいづれの企業も顧客に対して然るべきチャネルで然るべき価値を伝達している。

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「5年後、メディアはどう変わるかーべゾスのメディア買収が意味すること」
講師:佐々木紀彦 ㈱東洋経済新報社 東洋経済オンライン編集長

 

●東洋経済オンラインの戦略
ターゲット:20~40代リーダー向けのオンラインメディア
・ターゲット選定の理由…
①面白さ:これまで時代の変わり目に新しいロールモデルを作ってきたのは30代の人間であり、30代の人を応援することは日本の未来を作ることであるから
②人口:30,40代(団塊ジュニア)が人口のボリュームゾーン
③競合との差別化:これまでのビジネス誌は意思決定者の50代向け
・内容に関しては競合他社の反対を目指す。
(記者の数では競合に勝てないため、スクープは不利→クオリティの高い第2報として分析やストーリーを加える等)
●5年後世の中はどう変わるか?
・スマホの普及(7割がスマホとなる)
・ビジネスパーソン人口構造の変化:ネット前世代(45-65)<ネット後世代(20-45)
・テクノロジーの進化:5年前に開発されたiPhoneが現在広く普及。新開発されたペーパータブレットは5年後には普及?
・人とおカネの大移動:読者が動き、広告主やメディアがネットシフトする
・ウェブとテレビの融合:デジタル入稿、スマートTV、動画コンテンツ等
スマートTV:見ている人に応じてCMが変化するようなターゲティング広告が広がっている可能性
・ネットやテレビのようなメディアが発達し、5年度雑誌サバイバル激化すると思われるが、女性誌は残るかもしれない
→写真は一番美しい姿を形にするものだから
●ベゾスの買収について
・老舗メディア(編集力、コミュニティ力)+ネット企業(テクノロジー、分析力、経営力)=最強タッグ
・ベゾスの野望 アマゾンに技術者などの多くのビジネスパーソンを招へいしている
→eコマースとニュースの融合やメディアの中抜き等の効果

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2013/10/19(土)議事録「流通業の常識を疑え」
講師:松岡真宏 フロンティア・マネジメント 代表取締役

 

●1989~2007年までの20年間の日本の家計消費と内訳の変化
・家計消費はほとんど減少していない一方、水道光熱費の上昇と電化製品の普及による光熱費、高齢化による保険医療費が大幅に上昇。そのしわ寄せが衣料品消費にいっている。
・衣料品の支出は先進国の最低水準となった。しかしながら、衣料品の消費量が増加していることから、単価が下がったと考えられる。加えて、高齢化と消費電力の増加は今後も進むと思われるため、次にしわ寄せがいくのは飲食品か?
人口が減っていく市場においては人の財布の内訳を変えていくことが必要である。
●地方と都市圏
・東京から見た人口が減少していく田舎という構図は、新興国から見た日本と同様のもの
●百貨店とスーパー
・百貨店は大手が全体シェアの60%以上を占めている一方、食品スーパーは3%程度
地方スーパーは各地方大手のエリアシェアが高く増加傾向の一方、人口密集地ではGMSが高いシェア
●三大都市圏の変化
以前は東京、名古屋、大阪の人口推移が連動していたものの、近年は東京への一極化が起こっている→以前は製造業のために均質な労働力が都市周辺に必要であった一方近年はITやコンサルティングといった人が集中して高付加価値産業を行う時代
・人口集中の力
強烈な消費力:新宿の百貨店売上は九州の百貨店売上と同等、東京は全国百貨店売り上げの25%をしめる。日本の人口集中を支えているのは鉄道インフラ
●今後の産業観
以前の大企業と下請けの構造から、企業を機能に分解し、部分的に外部に委託するといった創造的な組み換えが起こっている。(販売促進、経営企画、給与計算機能の外部委託など)
●米国、日本の都市部、地方の生産性
・米国と比較して日本の生産要素価格は、労働が相対的に安く、設備が高い
→割安な労働力、割高な設備の生産性を上げることが経済合理的
・日本は労働集約型、米国は資本集約型であるが、日米間以上に日本内の地方と都市の生産要素の価格差が大きい→地方は人件費が割高な米国型、都市は設備費が割高な日本型
●中国をどうみればよいか?
・日本は産業汚染による公害が流行した時期や他の国の技術を「改良」して発展した歴史を忘れ、一部では中国を批判的にみる傾向がある。都市化に向かって同じ経験をしている中国には日本の交通整備や環境、防災等の知見を活かすことができると考えられる。
●中国の経済成長は鈍化するか?
日本の人口は1960年から2013年までで1.2倍となった。その鈍化した人口増加の中で10倍の経済規模となった。近年中国の人口成長鈍化について言及されるが、経済規模は成長していくと考えられる。
●中国で日本の小売業のシェアが伸びない理由
中国でカルフールやウォルマートといった外資系企業が売り上げ上位に位置する一方、日本企業はシェアを伸ばせていない。
日本の小売業は、国内で卸売業などの生態系で成り立っているため、中国での成功には小売業のみでなく、商社や食品卸売業の生態系の輸出が有効であると考えられる

山本先生からのコメント
時代の流れを勉強することが必要。
他国で結果を出すには、その国の現状を‘リアルに’知ること、書籍などでその国の歴史、自国の歴史を知ることが必須。

資生堂 野田賢二