「変革期を迎えた流通業から人間力を学ぶ」
講師:青木英彦 氏 メリルリンチ東京証券(株)小売セクターアナリスト

《講師自己紹介》
・平成元年神戸大卒業後、野村総合研究所に就職。最初の配属は株式の調査に配属
証券アナリストになり、小売業セクターを担当していた。
・1992年 デューク大学にてMBA取得
・1996年 ニューヨーク支店に異動 ここでも米株の調査担当だった。ウォルマートの分析など
実際にやってみたら面白かった。
・2000年ゴールドマンサックスへ転職
・2005年からメリルリンチ日本証券へ転職
《アジェンダ》
1. 消費の現状
2. 日本におけるEコマース
3. 世界で起こった流通革新(ECRを中心に)
4. 日本における製版連携
5. 先端技術を用いた高精度な在庫管理
6. セブン&アイ戦略試案
《消費の現状》
・直近の既存店売上動向
GMS,百貨店、CVS平均をみても、消費税増税後消費が良いとは言えない状況
・インフレが起きたとき、消費者は防衛的になる。
→低価格競争になる  ※オイルショック後なども同じ状況
・1997年のユニクロは700億円、現在は1兆4,000億円になっている
→ユニクロのように次に伸びそうな会社を探している

《日本におけるEコマース》
・2012年のEC市場規模:6.6兆円
・CAGR(05-12):17.4%
・2012年EC化率3.11% 米は8%
→17%の平均市場率、まだまだ伸びる余地がある
・売上推移(セブン-イレブン・ジャパン、ファーストリテイリング、アマゾンドットコムの比較)
→アマゾンの伸び率がすごい。2割の増収を続け、伸び率が落ちない
・アマゾンは総合ネット小売業へと脱皮している。
→メディアは安定的に伸びている
・アマゾンの国別売上高
→1位:北米、2位:ドイツ、3位:日本
日本は7,455億円 増収率、19%で落ちない
・アマゾンは日本の小売業売上高ランキングで13位
・講演内容からみるアマゾンのすごいところ
-戦略上重要な物流センターをオープン化している
-マーケットプレイスへの新しい出品者をみつける
-消費者の行動変化を促すサービスの開発
例)CDを買うと買ったCDのMP3をすぐにダウンロードできるようになる。後日送られてくるCDは必要ではなくなる。
※マーケティングと財務の強さがある
・アマゾンの強力なキャッシュ創出力
→66.8%のROI キャッシュフローがすごい
・アマゾンの脅威の本質は、荷姿を変えずに顧客に商品を届けることができる
サプライチェーンをやらないとアマゾンには勝てない構造になっている
・既存小売業は、2000年以降、売上高が24%減少、売り場面積が27%増加している状態

《世界で起こった流通革新》
・ウォルマートの食品市場進出をきっかけに業界全体のECR活動が進んだ。
食品、非食品のサプライアー、小売とでたすき掛けで勉強会を実施
※日本は、全然できていない。
・米はECRを国全体で実施した。
・結果的にスーパーマーケット各社は、ECRによって株価は上昇した
※しくみを変えると業界の影響が大きくなる

《質疑応答》
Q,EC化率3%をどうみているか?
日本は出遅れた感はあるが、時間の問題でEC化は進むと思う
よく楽天とアマゾンが比較されるが、どのように捉えているか?
楽天はマーケットプレイス型、売り先は不特定多数、アマゾンは工業製品を不特定多数にばらまく形式、基本的に事業モデルが異なる。楽天は事業モデルが異なるのにアマゾンを意識してか物流センターを3つ作ったがそのうち1つを閉じたことからも別の事業モデルと言えるのではないか
Q.ECRはなぜ日本で受け入れられなかったのか
人の問題、組織の問題かと。物流の改革をしないままの人が経営者になっているので、自分が経営者になったタイミングでやり切れないのではないか。

Q,青木さんからみて良い経営者はいるのか?
ユニクロ柳井さん。ドンキホーテの安田さん ニトリの似鳥さんなど基本オーナー出身者の経営者は優れていると思う。

 

「流通市場環境での物流概念」
講師:村山修 氏 (株)物流革命 代表取締役

<ロジスティクスに対する日米の考え方の違い>
米国:仕組みを作り、PDCAサイクルを効率的に回す。きちんとしたオペレーションの仕組みができている。
日本:KKDD主義(経験、感、度胸、どんぶり勘定)日本における物流のイメージはまちまち。ロジスティクスを研究している専門機関がない(専門家の不在)。
<物を売るための基本構造>
通信販売の様々な業態
:返品リスクを見込んで靴・バックの販売(マルイ)
:仕入→販売(アマゾン)
<物流業界の構造>
・サプライチェーンにおける物流全体を俯瞰する姿勢の欠如(=日本とグローバルの差)
・日本の大手小売業は、ウォルマートと比較すると販売管理費率が10ポイント高い。⇒オペレーション上の課題
例)工場から店舗まで商品が配送されるのに最大輸送6回、積み下ろし13回があり、荷姿変更と小分作業を繰り返し、コストの重複が発生している。
<ロジスティックと企業活動の関係性>
・ロジスティクスは経営の根幹であると考えるべきであり、需要に応じて調達・生産・販売・物流等の同期化を図ることで企業価値や競争優位性を高めることが可能(Amazonの例)。⇒ほとんどの日本企業では、SCMの位置づけが事業部より下である。
・上記に関連した好事例として、花王のSCM改革が挙げられ、出荷管理を予測しそれをデータ化し管理することで、在庫を40%削減し、当期純利益を2.6倍増加させ、ROEを15.3%に到達させた。
・DELLやZARAは空港に隣接する場所に物流のHUBセンターを持つ⇒グローバル化を見据えている。
・日本はものづくりなど物流の前段階まではトップレベルだが、物流の非効率性がネックになっている。⇒そこの課題解決を目指すのが株式会社物流革命のミッションのひとつ。

 

「世界人類への貢献とグローバルビジネスの本質」
講師:村山陽子 氏 株式会社PHILIA

山本先生からの紹介:
アフリカの蚊を退治するコトに貢献するビジネスに取り組む女性起業家。
彼女の人生観からにじみ出る人格、および、なぜ今この時期にこのビジネスに取る組んでるか、
この2点に注目して聴講せよ。

Ⅰ 世界人類への貢献
0.はじめに
・前半は世界人類への貢献、後半はグローバルビジネスの経験・気づき・エッセンスをお話します。

1.仕事について
・エコバイオフロック、マラリア/デング熱を媒介する蚊をゼロにするための取り組み。
・温暖化に伴い、日本でもデング熱発生。日本では年間100件、世界では2億2千万件発生している。
多くはアフリカの抵抗力の低い子供で、死亡率は極めて高い。
・マラリア/デング熱にかかったことがある人:教室内で2人。

2.村山さんについて
・はじめてのアフリカ(エチオピア)・・・なぜエチオピアに行ったか
→世界最貧国の一つであるエチオピアに3週間滞在し、貧困の原因を探るため。
→エチオピアの宗教:1日8時間祈る(貧困からの脱出を祈願して)(糧は施しのみ)
→貧困からの脱出を妨げる要因(国連の指摘)
・ドバイでのビジネス(3年間)・・・水質浄化機械の販売
→展示会にてマラリアと出会った
安くて簡単で誰にでも効果がある商品→アフリカで求められているのでは無いか。
→学生時代からアフリカの役に立つ仕事をしてみたかったため、すぐ「やりたい!」と思った。

3.世界での活動記録
・製品説明:ZERO-MOZ・・・蚊の数を減らして、病気の媒介撲滅へ
→撒布場所:水路、水たまり、河、池などの水場。
※水場は全ての人が飲み水として使うが、人体・生態系への影響はなく、
むしろ水質浄化効果があるので、極めて安全性が高く、安心して撒布可能。
※注意すべき場所:蚊は1滴の水の中でも卵を産むので、各家庭の蚊の発生しそうな場所を探す。
・セミナー・啓蒙活動・・・意識改革の実施
・公衆衛生活動の強化(ゴミ処理)・・・ごみをまとめて捨てる習慣が無い田舎町への指導。
・住民宅での蚊の収集・・・収集した蚊を分解して、感染の有無を調査
→感染した蚊がいた場合は、徹底して消毒を実施。
・厚生省との取り組み(エチオピア)・・・
泥のたまった場所への塗布には、現地の材料を使って浮かす工夫をした。
※継続して塗布してもらうため
・花栽培とエチオピア大使公邸
・コンゴ民主共和国・・・SFC研究室の人などと30名と同行。
コンゴの大学で、日本の伝統・精神文化などを教える講義を担当。
・コンゴ厚生大臣の言葉「今まで世界に2つの対策があった。ZERO-MOZは3つめの対策となるだろう」
→すぐにプロジェクトチームを立ち上げてくれたが・・・
→政権交代により大臣交代し、プロジェクトも白紙に帰す。
・ガーナ:野口英世研究室による効果テストを実施。
・アンゴラ:1日中マラリア/デング熱の危険に晒されているエリア。
・チャド(アフリカの真ん中の国):TICAD Vへの参加のため。
・マラリア対策の現場:
きつい(気温40度)・汚い(ゴミの中など)・危険(感染の危険性・紛争地帯/治安の悪さ)
→なぜこんなことをしているのか:突き詰めると「自己満足」
→バタバタしている中で皆で同じゴールを達成することが喜び。すごく生き生きして働く。
・貢献・支援とは、大げさなことではない:目に見えるものだけが支援で無い
・モチベーション:自分の信じていることに対して、私の思いは常に前向き

Q1:罰金制度はどこである?
A1:スリランカ・シンガポールなど。アフリカの貧しいエリアはどちらかと言えば放任。

Q2:現地のニーズは、マラリア対策と浄水効果のどちらにプライオリティーがあるか。
A2:マラリア対策の方が、命に関わるので優先度高い。浄水効果より、「水をくれ」となってします。
売り方としては、何かのついでに持って行って、そこから広がる感じ。
マラリアを前面に持って行くと、話を聴いてもらえないこと多々あるため非常に難しい。
3年間全財産投げ打って放出し、その後、少しずつ出資先が出てきた。
Ⅱ グローバルビジネスの本質
・人脈作りは、大きな戦略
→この人と出会いたかったらここに行けばいい、これをすれば良いがわかる
→それをまとめたのが、今回のプレゼン
・海外での仕事の第一歩:ドバイへのきっかけ→フリーゾーンへの参加
・日本にいながら海外の人脈作りをどうするか:国連難民救済機関の年一回のイベントに参加
→そこで出会ったピーターにハブになってもらい、紹介をしてもらった。
→セミナー・フォーラムには積極的に参加するのが近道
・海外での人脈作り:展示会が最も近道
→出店の際は、野点を用意して日本の伝統文化を感じてもらうことで、
交流が深まり、人を紹介してもらいやすい。
・国際機関・NGOの活動に興味を持とう
・各国大使との出会いのチャンスは?
→セミナー・フォーラム・レセプションに参加して、名刺交換・交友を深めること。
・話題を豊富にするために、多趣味にしておくこと。
・メッセージ:世界を身近に感じてほしい。

Q1:アフリカの人脈と日本企業の人脈をマッチングしたらいかがでしょう。
例えばキンチョーとコラボして持って行くなどは、考えていらっしゃいますか。
A1:やったこと無い事なので、どこにアプローチしたら効果的かなど具体策を教えてください。

Q2:ZERO-MOZはいくらですか?
Q2:六ヶ月の効果で3,500円。

Q3:危険な目に遭うのに、どう対策している?
Q3:ある程度、覚悟していっている。

Q4:マラリアの薬に決めた理由は?
A4:性格的に浮気性だが、仕事は1つに決めないとなと思ってこれにした。

Q5:取り組んでいるボランティア活動はありますか。
A5:1番大変な状況は目が見えないこと。盲目の子供に読み聞かせのボランティアをしていた。
障害者に対しては、支援を惜しまない。ピクニック・遊園地への同行など。

Q6:製品について。地域・国全体の課題解決のための活動だが、
アフリカへの進出を考える日系企業への参入障壁を下げるような活動はお考えですか。
A6:仰る通り。事例はあるし、活動もしているが、ビジネスに結実していない。
個人向けに販売している方が売れている。
Q6:キンチョーを1日中置くより、そもそもの解決をした方が良いなと思ったので。

Q7:常に前向きなモチベーションは?
A7:自分が信じていることに対して後ろ向きになれない。
問題が起こったら、事務的に考えて対処する。前向きに考えられなくなったら、やめる。
山本:理屈じゃ無い。ロジカルでなくても、乗り越えられる。
じゃないとモチベーションなんて続かないよ。