第5回GP議事録(9月10日)

第1部 人間力講座①「ブランドで攻める、日本発、アジアへ世界へ」
講師:岡崎茂生氏 (株)フロンテッジ 執行役員 電通出向

■日本は何周おくれになっているのか
1)日本は情報鎖国-日本人は、自国民が発信したものを読んでいる
cf.アジアだと4ヶ国語くらい普通に話せる
2)法規制-旅館業法などの規制が厳しい
cf.AirB&Bなどは日本では法律上禁止
3)伝統的企業が多い=なかなか外資がはいれない
4)テクノロジー-日本は進んではいるが、先進国の中ではまだまだ遅れている
5)起業文化-アメリカや中国と比べると日本は起業する人が少ない
6)市場普及-起業後、普及のためにはお金も戦略もかかるが、その支援に消極的
7)外国資本-中国が成長した理由は、外国からの出資を集めたから=FDI(Foreign Direct Investment)が重要

■世界における日本企業の評価と、中国市場における各社のマーケティング事例
・グローバルマーケティングにおける日本の評価は?
∟SmartCompaniesに中国・韓国企業はランクしているのに、日本はない。
・ThyssenKrupp/Schindler/KONE/OTISなどのブランドを中国では普通に見るが、日本では見かけない
=いかに日本が鎖国的か
・HUAWEI/Samsumg/Lenovo/モトローラ などの事例と比較すると、いかに彼らがグローバルに対して積極的にアプローチしているかがわかる

■なぜ日系企業は中国でうまくいかないのか?
1)名前が通用しない
・どの企業も読み方より意味を重視した中国語名を用意している(Apple/hp/Lenovoなど)
→一方で日本企業はすでに漢字があるため、名前の付け直しができず不利
2)力をつける中国ブランド
・Oppo/Powerland(「高級婦人バッグ」のメーカー・マーケター)/innisfree(韓国発のコスメ)などが力をつけてきている

■ブランディングを成功させるには?
1)まずストーリー
2)ブランドシンボル
3)スポークスマン
4)ブランド体験スペース
5)付加価値を象徴する言葉

■日本企業のブランドにおける課題とは?
・日本のブランドは意思がない(意志=目的/構想/情熱)
・事業の問題-消極的な海外直接投資
・組織の問題-自前主義による肥大化
・グローバル担当組織がない
・方法論の問題
→武器なくしてブランドなし
→意思とビジョンを持つこと。ブランドの源泉は意思。ブランドとはわが道。意思ない人にブランドは作れない

■企業の中でのブランドの重要性
・製品/人/広告という会社のリソースは重要。しかし結局残るのは”ブランド”=ブランドは長期的投資
・売って稼ぐごと<=>ブランド育成
ex.カローラ-最初の頃の車と現在の車は異なっている。しかしブランドは残っている
マーケティング=短中期の利潤の最大化/4Pを最適化し消費者の行動を促進するもの
ブランディング=長期的資産としての行為形成

■ブランド=意志
・最初はどれも小さな会社だった。しかし愚直な意思と信念があった
cf.Phil Knight/Starbucks/Dyson「ハイエンド家電メーカー」/Under Armour/Dolpi/MESH
・SWOT分析の前に、まず何をやりたいのか意思をもつこと。

■ブランドの本質価値を定義することの大切さ
・ブランドの本質を定義すると、やるべきこととやるべきでないことがわかる
cf.
Fun Family Entertainment -Disney
Rewarding Everyday Moments-Starbucks

■中を固める インターナルブランディング
・社員にブランディングを理解させるために、よくある方法
1)ブランドブックを配布する
2)自分ゴト化する cf.Philipps社の全社会議
・社員にブランディングを理解させるために、意外に少ない方法
3)ブランディング部門をつくる cf.永谷園しょうが部
4)現場に権限を与える cf.リッツカールトン

■外に向けて エクスターナルブランディング
・ソーシャル
SocialGood SocialMedia
よい行いも悪い行いも、あっという間に広まる時代=より志が問われる
・非営利事業と営利事業が交わってくる時代=敵対から共生へ
cf.
Honda Internavi-3.11の際の交通網の確認
AmericanExpress-クリスマスモールのキャンペーン
Coca-Cola Smile Back
・Quality+Community戦略
少数でもよいので、ファンを育成していく
1)まずミッションありき
2)絶対ゆずれないこだわりをもつ
3)こだわりを共有してくれるファンをもつ

■終わりに
オーバー・マーケティング
オーバー・ターケティング
の罠にはまるな。
意志ある存在としてわが道を進もう


第2部 マーケ感性講座「定石を超えろ!」
講師:小林忍氏 早稲田大学商学学術院非常勤講師
英国ウオーリック大学経済学部大学院修士課程修了

■この講演では、「帰納的に導出 × 示唆・方向性」の用語を「定石」とする
■人がやって成功した方法(How)を真似するだけではダメ。
ポイント:それが何故うまくいくと考えられるのか(Why)から議論するのが大切
■帰納法-事象の観察から判断しているので常に、正しいとは限らない
=成功事例から抽出された経営の定石だが、うまくいかなかったように見える事例も少なくない

【選択と集中】-自分で自分の運命を決められるのか
成功事例=GE/反対事例=Panasonic・中山製鋼所
∟ではなぜGEはうまくいったのか?
→そもそも「No1」とはシェアのことではない。価格とクオリティ。
価格とクオリティがNo1なら、自分で自分の運命を決められる。自分で自分の運命を決められる事業を「選択と集中」したか否かの違い
【コミットメント】-誰が誰にコミットするのか?
成功事例=ゴーン社長が「ノビシロ」をしっかり把握して具体策を策定し、そのうえで、“うまくいかなかったら自分がやめる”
反対事例=世の中の多くのコミットメントでは、「ノビシロ」の確認ないままに“数値ありきで”目標をおいて、「下に」無理やり目指させる”

なぜ失敗するのか
→①経営の意味を誤解している、②How論としてとびついてしまう、③そもそも定石を実行できる組織的な仕掛けが無い、が、しばしばみられる原因。
③の「仕掛け」とはどういうことか。【俊敏な経営】を例に説明する。
成功事例=星野リゾート 2ヶ月で現場のアイデアから雲海テラスを作った
∟なぜできたのか?
→徹底的な現場への権限委任や、それが放漫にならないように、星野社長がVisionと戦略目標はしっかり策定して社員に周知する、等、俊敏な意思決定を下すための組織的な仕掛けが出来ている。
反対事例=星野のような仕掛けもないままに、既存の体制・プロセスの中で「迅速な意思決定をする」と称して、情報の吟味等することなく結論を急ぐ。これでは、単なるおっちょこちょい。

■なぜ、前述①~③のようなことが生じるのか?
1.組織としてIntelligenceが弱いため
Intelligenceは、1)知性 2)諜報 =情報を集めるだけでなく、それに一工夫もふた工夫も凝らして「示唆」を取り出すこと。
cf.「情報」と「示唆」
競合がある部品の値下げをした。自社も部品の値段を下げるか?
→情報レベルの人は、追従値下げを選択した。
→示唆レベルの人は、競合の生産能力の制約等から相手の意図を読み、値下げはブラフであると見破って、値下げの判断に踏み切らなかった。結局この打ち手が奏功した。
2.経営者の間違った判断をチェックする機能が弱い
3.経営者に実情が届かない
→なるべくギリギリまでいい報告をしたい/怒られたくないという会社員の性

■ではどのように対処すればよいのか?
1.経営者=自分で決める
・インテリジェンス機能を垂直立上げする (社外から優秀な人材を呼び込む)
・自分自身のインテリジェンスを高める。経営者は、オーケストラの指揮者みたいなもの。それぞれの楽器はできなくてもよいが、音をはずしたら指摘できなければならない
・しっかりとした人選の下で、社外取締役等、諫言する役割の人を任じる
・人は嘘を付く、ということを前提に仕組みを考える

2.本社スタッフ=インテリジェンスの要
・自身のスキル向上に努める。勉強せよ
・経営者に直言することは時に危険。誰が自分を守ってくれるのか意識し、盾になって貰う人を探す。そのためにも、力を付ける、現場との特殊なパイプを構築する、といった努力は必須

3.現場要員
・最初の一度は本当のことを上にあげて怒られる。魂を売るのはその後。それによって、報告を受けた側が、現場のホンネを理解できる。

*その他の対策
・会議で一言一句書き写した議事録を一度作ってみる
→発言の幼稚さや、責任の所在をはっきりできる

■最後に
3つの「定石」を使いながら受講生にメッセージを発したい。
【選択と集中】~How論Jumpはするな
あたかも経営の特効薬のように語られる言葉だが、もちろん、そうではない。これに限らず、何かよさげな打ち手を見知ったとしても、How(戦略の運用)論にいきなり飛びつくことは禁物。その前に、Why(情勢判断)、What(戦略)を良く吟味すべし。
【モチベーション】~嫌われる勇気を持て
給与引き下げや事業売却のような痛みを伴う施策を、この言葉を言い訳にして逃げる経営者がいる。しかし、結局は更に事態を深刻にして、皆がUnhappyになった。GEのウェルチは逆。当初、事業を売りまくって、ニュートロン(中性子爆弾)、いわば人殺しとまで酷評されたが、彼は嫌われる勇気を持ち続け、GEを更に偉大な会社にした。売られた事業部の人たちも、時を経て、売られて良かったと語ったし、買った会社もHappyだった。これこそが経営ということではないか。
【リストラ】~ノブレスオブリージュを持て
リストラとは、そもそもは事業再構築のことだが、日本ではなぜか人減らしの意味となっている。そして、何千人もの社員を解雇して黒字化した社長が10億円の報酬を得たりしている。その10億で100人のエンジニアがいれば何ができただろうか。こういうさもしい経営者になってはだめ。ノブレスオブリージュ(貴族の義務)を持って欲しい。人の犠牲で黒字を達成するのではなく、一人でも多くを助けながら黒字になる手段を徹底的に考え抜く、それが、将来、経営幹部や経営者になるだろう、諸氏の役割と心得られたい。