第3回GP議事録(2017年7月15日)

第1部・第2部「これからの技術変革と社会変化」

講師:河瀬 誠 様 (エムケー・アンド・アソシエイツ 代表)

●豊かになってきた社会
世界はどう変わってきたか?
ハンス・ローリング教授による200カ国200年の分析では
平均寿命も平均年収も上がってきている。動かしているものは「技術」である。

未来を見通すにはPESTとよく言うが、Politics、Economy、Societyは予測困難である。
変化の原動力となる「Technology」と「人口動態」を押さえて、未来を読み取る。

●破壊的技術
破壊的技術の登場により、今まで主力だった技術も産業も企業も交代する。
現在の破壊的技術は情報通信技術である。
(ICTに破壊された業界→BIT産業/メディア産業/流通業など)
今生まれた子供たちの2/3は、今は存在しない職業に就く。

●ICTの現在
世界の全情報がクラウドに接続され、実質的に全てのモノが繋がる世界になる。
セキュリティは重大事項となる。
認知能力は進化し、「弱いAI」が話題になっている。
従来の数式ロジック・総当たりによる認識は大きな限界に直面し、
人間が学習するような方法で学習する「深層学習」が進んでいる。

●「認識能力」の進化
音声認識の進化。(IBMのワトソン/アマゾンのAlexaの登場)
Google翻訳も深層学習を採用して圧倒的に精度を向上している。
日本語は難しいため、日本語の音声認識の領域は遅れている。
画像認識の進化が自動運転を生み、自律動作の進化がロボットに反映される。

窓口業務・コールセンターの代替や、膨大な専門知識の検索の代替が起こる。
これはモノ知りだけの価値の消滅を意味する。
専門知識と習熟に価値はなくなり、責任をとって判断することのみに価値が残る。

●モノ作りへのインパクト
アナログ製品の消滅。
日本はアナログ製品という「工芸品」を作ることは世界一であるがデジタルにいくと弱い。
21世紀にはアナログ機器がすべてデジタル・デバイスに集約されている。
3Dプリンターが適用範囲を広げ、製造プロセスを変える時代に。

●進化するロボット
ホンダASIMOは全ての制御をプログラムしているので、一度転ぶと全てをプログラムし直す大変な作業がいる。
決められた動作以外、例外処理は限定的。ボストン・ダイナミクスのロボットは深層学習によって、
人や動物が歩くのを覚えるように覚える。産業用ロボットも人工知能と融合し、人が習得に10年かかる職人芸
を1週間で習得するようになった。(料理ロボット等)産業用では、他に物流ロボット、介護ロボット、
土木ロボット、農業ロボット等が展開されている。

●自動車産業の構造改革
日本の基幹産業であり、アナログ・擦り合わせのカタマリである自動車産業が変わる。
ガソリン自動車から電気自動車へシフト。
欧州はガソリン車禁止に向かい、最大の市場である中国でも電気自動車が普及している。
インドも2030年以後は電気自動車以外の販売を禁止。自動運転も世界で始まり出している。

UBER、Lyft、GRAB、滴滴打車などライドシェアは急成長している。
車は「移動するデバイス(ロボット)」になり、自分が運転するハードウェアから、
生活の中で利用するプラットフォーム上のデバイスになる。(コネクテッド・カー)
新しい移動手段として、世界ではハイパーループや大型ドローンなどの開発が進んでいる。
それに比べて日本のリニアカーの開発のスピードは遅い。

要介護者の爆発的増加、農業と土木建設作業へのロボットの必要性、地方交通の崩壊などの課題をみると、
日本こそ自動運転やロボットが必要。ロボット化なしでは社会は維持できない。

●医療の領域
現在の医療は症状別の「標準」治療だが、個人によりクスリや治療効果は全く異なるため、
個人に最適な治療をする「個別化医療」へのパラダイム・シフトが起こっている。
個別化医療のベースとなるのが遺伝子情報である。

リアルタイムでの医療・健康・生活データの収集・分析が進む。
ゲノムの直接編集が可能になり、スーパー生物は既に誕生している。スーパー人間も可能に?
今世紀中には人間と生物の在り方が根本的に変わる可能性もある。
医療の領域における、3Dプリンタやロボットの活用も進む。

●今後に向けて
20世紀の世界地図では日本はアジア唯一の先進国。日欧米の三極体制であった。
20世紀最貧国だった中国は30年の高度成長を経て、21世紀の主役へと変化している。
変わらない日本と、成長を続ける世界。
米国では新たなプレイヤー(企業)による再生が起こっている。

日本人は自分たちをお金持ちだと思っているが、世界で比較するとそうではない。
新卒の初任給こそ高いが昇進しても年収の伸びが小さく、管理職の給料では東南アジア以下である。

人口動態が経済をドライブする。日本は20世紀後半の長い人口ボーナス期間のあと、
世界で最も急激に高齢化が進む。21世紀には若者が希少となる世界にシフトする

「日本はすごいぞ」と思っているのは危険である。

成功体験を捨てるのが一番大切、かつ、一番大変である。
成功体験は環境が変わると役に立たない。むしろ逆効果となる。
成功体験を捨ててこそ次の成功がある。
身に着けた常識を手放すアンラーニング。
昨日を捨てよ。自分が得意なことに溺れず、物事の本質を鋭く洞察せよ。