【開催概要】
日時:6月14日(土)10:30~18:00
第一部
演題:グローバル競争に勝ち抜く戦略的人材
講師:中央大学大学院 戦略経営研究科 客員教授 中田 研一郎氏
<イントロダクション>
山本先生
・一日の終わりに今日一日ベストを尽くせたか振り返ること。
蓄積が大切。瞬間・瞬間が大切だと認識する。
・GPの講座は情報量が多い。全てとは言わなくても、ひとつでも自分に取り込むこと。自分の成長スピードを早めること。
・styleはいらない。Desireが大切。Desireを作るための気付きをGPで得るよう努めること。
第一部
グローバル競争に勝ち抜く戦略的人材
<講師自己紹介>
・中国において、SONYではじめて大量に現地採用を行い、人事改革を行った。
・人事の仕事をしたのは最後の5年のみ。
在職中は海外出張500~600回程経験し、グローバル人材として活躍。
人事については素人だったが、それまでの知見を活かし現地での交渉等を担当した。
・退職後は大学教授等。
・ソニーでの抜本的な人事改革経験→本にして出版。
最も忙しい時期に、話したことを書き取らせて編集した。
→エネルギーレベルを高めて集中すると大きな仕事ができる。
<講座の流れ>
(1) グローバル人材はなぜ必要か?~日本企業を取り巻くグローバル環境~
(2) グローバル人材とは~求められる人材要件~
(3) 日本企業のグローバル人材育成の遅れ
(4) 格付・評価制度のグローバル統合
(5) 事例紹介 ソニーとサムソンのグローバル人材の採用と育成
(6) グローバル人材の見つけ方~組織と人財の双方向診断システムの導入~
<講座内容>
(1)グローバル人材はなぜ必要か?~日本企業を取り巻くグローバル環境~
・組織がだめになる原因は社長にある。
・同じ人でも、環境によりグローバルに沿うかどうかが変わる。
能力×場=成果。 場を間違えると成果はでない。
・中田氏は外務省入省後1年で退職。
・日本は、「同期入社」や年齢を過度に重視する。→たこつぼ文化やいじめの原因。
→グローバルと対極。
・SONY、年齢で入社資格区切ってなかった。
・日本の人口ピラミッド→高齢社会を表している。
(日本の人口1億2700万人。内、20歳以上の人口は1億400万人)
→国の勢い、マーケットの縮小を示す。
・30年前、ヨーロッパの人通りの少なさに没落の傾向を感じた。
・インド・中国の人口ピラミッドは末広がり=国の勢いがあるということ。
・中国の一人っ子政策、1977年~現在まで続いている。
・1900年 世界の人口19億人 →2011年 70億人超→100億人を超える勢い
→地球の水・食糧不足のおそれあり。
・バブル崩壊(1989年)日経平均3万円前後→1991年までに半分以下に
リーマン・ショック:7,000円前後→現在:15,000円前後。
・新卒一括採用、終身雇用、年功序列という制度の疲弊。
→グローバル化に対し、もはやパッチワークでは議論できない。
・トーマス・フリードマン The World is flat 来月までに読むこと。
1492~:The Earth is round
2000~: The World is flat!
→移民(人口移動)の必要がなくなった。
Barriers からNo barrierへ。
・Eメール文化:94、95年頃から。
過去のテレックスは消滅。
→情報のスピード、ビジネスのスピードが変わった。
→しかし、表面だけやったふり。Google脳、検索→考えるということがなくなってくる。
→経験、実績がないと説得力はない。考えて行動しない限り、情報は意味を持たない。
人に感銘を与える話はできない。
・グローバル金融市場から眺めた世界はフラットではない。
・グローバル規模の格差の構造
→フラット化する世界の経済の地殻変動
日本人が意識していなくても、インドや東欧の安い労働者とcompeteしている。
→30億人のlabor marketで戦っているという意識変革が必要。
・人財の二極分化による格差
→市場価値(稼ぐ能力)の不平等
・”We are the 99%.”(ウォール街デモで掲げられた言葉。)
米国は、上位1%がGDP500兆円のうちの18%を占めている。
・今、世界経済は地殻変動の時。
→世界の政治経済体制は多極化体制へ意向。
EX)G8→G20
・BRICsは輸出基地から巨大マーケットへ。
・先進国でも、米国は人口増加傾向。(移民受け入れとスパニッシュ系子沢山による。)
・世界のGDP総額(GSの予測)
→2050年には、中国と米国が入れ替わる。
・世界経済に占める国別GDPの推移 アジアの台頭。
・日本:総人口の推移 人口ボーナス期→人口オーナス期。
(オーナス:重み)
→労働力の減少
→2055年には生産年齢人口46%減。年金は維持できない。
日本のマーケットだけで売上を伸ばすことは現実的ではない。
アジアに進出しなければ、ビジネスを維持・発展させられない。
ビジネスで一番大切なのは客。客のいるところでビジネスをする。
・「既に起こった未来」byピーター・ドラッカー
日本の少子高齢化とそれに起因する労働力不足問題は、「未来の予測」ではなく「既に起こった未来」である。
・2010年、中国が日本のGDPを追い抜いた。2030年代にはインドにも追い抜かれる。
(2005年時点では、2015年と予測されていた。)
インドにはカースト制度があり近代化が難しいが、インフラが整えば頭がいいので必ずTOPになる。
・日本企業の労働生産性の低さ
→日本は先進5ヶ国の中で2番目に長く働き、最も生産性が低い。付加価値も低い。
・世界の国際競争力ランキング IMD調べ
→日本、1989年で1位だったものが、2011年には27位に転落。
・国際化からグローバル化へ
国際化→グローバル化時代
・日本企業は、人、物、金の経営資源のうち、人的資源だけは世界に開かれていない。
→人的資源の質と量が、成長のボトルネックとなっている。
・グローバル・オープン・アーキテクチャー企業
日本人と外国人の”グローバルマネジメント職”の枯渇
・変化への認識と対応
「変化への対応」 (ダーウィン)
茹でガエル→生きた化石→ガラパゴス化
▷ビジネスの世界では、「変化への対応」だけでは不十分、「変化の創造」をしたものが生き残る。
トレンドを捕まえる、変化に対応するというのは既に一歩遅れている。
変化に気づく、アンテナ、センサーを持つこと。(若手に期待されるもの。)
人財のガラパゴス化を避ける。
・企業のグローバル化の必須要件
1.マネジメントのグローバル化
2.人材の多様化とグローバル人材の育成
・新興国内市場戦略において求められる日本企業の東アジア人材戦略の変化と対応策
→現地化の促進
・グローバル企業の構造
グローバル企業の定義:byピーター・ドラッカー
グローバル(本国人主体)↔トランスナショナル(多様な国籍)
・日本企業を取り巻くグローバル環境の変化に気づいていたか?
どのように対応するのか?1年後、3年後、5年後について考えること。
(2)グローバル人材とは~求められる人材要件~
・ディスカッション データ・自分の意見を持っていて、はじめてディスカッションできる。
Readyになったらくること。
・大衆の面前で自分の意見をロジック立てて言うトレーニング
・多様化と普遍化
→文化は多様化、文明は普遍化。
→経済活動、ビジネスは多様化と普遍化の双方の影響を受けるが、経済は文明の一部なので普遍化の影響をより大きく受ける。
・グローバル時代の組織と個人
個人-多様性、異質の取り込みへ変化
→「グローバル・マインド」を持った人材
ジェネラルリスク。スペシャリティを持つこと。「It’s my field.」と言えるように。
・「想定外」の時に対応するのがジェネラリスト。
しかし、ジェネラリストは必ずスペシャリティを持っている。
深い水脈を掘ること。あらゆることは地下水脈でつながっている。
知識や人脈にギャップのある人とは話ができない、続かない。
・グローバル・マインドとは?
EX)イスラム圏、金利の否定。否定ではなく理解する。
- 異なる価値観を理解する。
- クリアな意見・意思を持つ。(事実認識。ファクトベース)
- 確立された「個」を持つ。個人=アイデンティティ。
・個人、価値観、スキル
変化の時代。人材の二極分化。
→Core Competence ↔Coreless
・Core competence どこでも通用する能力。
Baseになるのは信用力。約束を守った実績のレコード。
自己責任力、問題解決力、コミュニケーション力。その上に、スキル・専門知識
・グローバル人材-人間力を基盤とする自立型人在像
知・情・意
スキル・コミュニケーション・意思
意見形成力トレーニング
抽象化には数学がベスト
学問:物事を抽象化する能力を涵養するためのもの。(言語・数学)
→学ばざるもの食うべからず。稼げない。付加価値を産めない。
人の心がわからない人間に、組織を統率することはできない。
(3)日本企業のグローバル人材育成の遅れ
・コミュニケーションにおけるKYの問題点
→自分の個性を発揮、主体性をもって人生を生きること!
・「きくこと」と「空気を読む」ことは異なる
Hearing(聞く)listening(聴く) 耳で音を理解することが基本
そうではなく、Tuning-周波数を相手に合わせてメッセージを理解する。
異なる周波数の人と話すとき、相手の周波数にあわせる。
さんまはTuningの天才。空気を読むのではなくつくる。コミュニケーション=Tuning。
黙っていてあとで文句を言うのはdouble-tongued. 二枚舌。嘘つき。
空気に支配されて身動きがとれない。
・付和雷同しないようにするには?
→アッシュの同調実験 同調圧力 斉一性(uniformity)を打破すること
小さな成功体験を積んで自己効力感を高める(自信をつける)職場環境をつくる。
・グローバル環境におけるコミュニケーションスタイルの違い
→発信力を養成すること。
・自己変革力がなくなると、会社は倒産する。
・同じ釜から一歩でたら、その人の価値はゼロ。
釜をかえてもやっていける人がスペシャリスト。
・自己責任力3要素
1.自己同一性。Consistent。首尾一貫した主義主張。出る杭は打たれる。出すぎた杭は打たれない。
2.自立性。Independent。組織、他人、環境に依存しない。すべて自分の責任。人の悪口を言わない。人を貶めることで自分の価値を証明するような根性は最低。
自分が実行者になる、実力と立場を作る。
3.自律性Discipline+Autonomy。セルフマネジメント。臨機応変に変化。
・「問題」の3重構造
問題とはなにか?
①Problemの解決
②Issueの整理・解明 Issueを見つける能力が、改革の第一歩。
③Subjectの設定 本質的に何をするかを決める。
GE・・・トースターを作っていた→今は作っていない。方針転換を行った。
・問題の本質を掘り下げる。
付加価値を生む人:Issueを自分で見つけられる人。
ブランクチャートに、自分のIssueを書き込むこと。
(4)格付・評価制度のグローバル統合
・GP HR platform
世界共通の人事制度を整備。
→導入しないと、グローバル人材は集まらない、育たない。
→無理やり共通の枠を押し付けるのではなく、相互解釈が可能な枠組みをつくる。
・問題提起
・安定志向日本人学生のみ→国際競争力凋落
・東アジアマーケット具現化?
・危機意識と行動力
→東アジア人材プラットフォーム提言
・SONYの人事制度
サクセッションプランニング
非連続的アプローチ
(基幹人材育成)
社内University
・配属:ドラフト形式。ほしい学生がかぶったら話し合い。
内定と同時に配属先が決まる。
・東アジアの中の日本。
東アジアをひとつの大きなマーケット、面として捉えることが重要。
6/14(土)
16:00〜18:00 マーケ感性講座「(株)資生堂のブランド戦略」
講師:杉山繁和 (株)資生堂 執行役員 国内化粧品事業
マーケティング領域 CPBグローバルユニット担当資生堂のブランド戦略
1.化粧品業界について
化粧品業界はまだまだ成長過程
2012-2017年の市場規模の推移
日本 +0.4%
他アジア +10%
地域によってニーズは様々
中国 女性のファンデーション使用率は都市部で30%,農村部で10%。
中間所得層の拡大…中間所得層は高額帯のブランドより下の化粧品を使う層
高額帯を使う層は人口比3-5%。
それでも人口母体が大きければ規模も大きい
資生堂は中国市場に進出して30年
進出当初は、市場のプレイヤーは地場メーカー&外資は資生堂のみ。
近年は競合が多く、中国での宣伝費の支出が資生堂の数百倍に登る外資もいる。
2.資生堂の現状について
2015年3月期
海外売上高割合 50%超見込み
(2002年度は25%)
国内市場の伸びの鈍化、及び国内シェアの減少も一因
宣伝デザイン部に130名のデザイナーを抱える。
内、海外要員は10名未満。
海外店舗のカウンターは、かつては日本で設計し、現地で施工していた。
デザイナーの現地採用、また出張・駐在での対応を今後増やす。
「資生堂」ブランドに寄りかかってきた側面。
→「資生堂」の傘から外し、イメージを切り離したブランドの構築
(「資生堂ウェブサイトから新ブランドに入れる」、「メディア発表時に資生堂の名前を出す」等、未だ資生堂ブランドへのこだわり捨てきれず)
社員が「資生堂」のことが(客以上に)大好き。
外人部隊として資生堂に入った杉山氏。
「あなたは『資生堂』が好きじゃないんですか?」と聞かれるが、
「好きな間に会社が無くなったら困る」
3.ブランド戦略
地域別(欧米、中国、日本)にブランド設定。
中国市場は、日本の昭和30年代のイメージ。
1万円台と、5,000〜6,000円に区分。
日本国内の「資生堂ブランド」…化粧品、健康食品、薬品、と何にでも「資生堂」の名前を付けている。
化粧品は、「カウンセリング化粧品」と「セルフ化粧品」に区分
カウンセリング化粧品はFace to Faceで製品を紹介し、肌測定等個々人に合った製品を買ってもらうのが前提。
しかし、実際には「マツキヨでも売っている」。
契約上は、小売店がカウンセリングを実施したうえで販売することになっているが、
競合品の増加と販売チャネルの変化により、カウンセリング無しでの販売が増加。
カウンセリング化粧品は、専門のカウンセリングを受けることを前提に作られており、
客自身だけではどれを買えばいいのかわかりにくい。
(セルフ化粧品は、客自身が商品を選ぶことを前提に作られており、わかりやすい)
このことが、国内苦戦の一因。
資生堂のミッション=「美しい生活文化を創造する」
化粧品、医薬品、食品、…と多角化の道を進んだ。
客からみた資生堂とは?
「中途半端」、「40〜50代からは支持(資生堂の価値がはっきりしていた時代を知る世代)」、
「良い会社。だけど使ってはいない。どれを使っていいか分からない」
商品の単価…1万円〜500円。全て同じ資生堂。
⇒日本では問題にならないが、海外では客は怒る。「地元で1万円で売っているブランドが500円で、汚い薬局で売っている」
⇒資生堂社員としては、大好きな「資生堂」の名を付けて売るのがなぜ悪いのか分からない。
この温度差が苦戦の原因。
資生堂の企業好感度シェアは上昇。売上シェアは下降。
1979年以来、シェアは下がり続けている。
これを「右肩上がりにしたい」
ブランド再構築の3カ年計画
・乱発使用される「資生堂ブランド」の整理
・「資生堂」に頼らない戦略
資生堂を、付けるか、付けないか(1かゼロか)ではなく、もっと「したたか」に資生堂の傘を使用。
社長、役員、宣伝担当幹部で一人ずつ「資生堂とは何か」を発表。
⇒みんな「バラバラ」の回答。「ちょっと違うだけ」と言うが、「客からしたらすごい違い」
資生堂グループとして今後売っていくには?
企業としての資生堂はどこまでか。
ブランドとしての資生堂はどこまでか。
を、ロジックで整理しなければならない。
半年かけて、下記の通りブランド体制のフレームを構築(アンブレラ)。
S…「資生堂」
SX…「資生堂+その他ブランド名」
XS…「ブランド名 by 資生堂」
X…「資生堂の名称を全く使用しない」
役員は5年で変わるが、そのたびに企業の価値が変わってはいけない。
コアバリューを明確化し、分かりやすく整理した。
資生堂のターゲットの明確化
・「何でもいい人」ではない。
・女性(女性は10〜80代まで美に対する気持ちが変わらない。80代の女性も、10代の女性と同じく「目尻の皺が…」、「肌の状態が…」と悩んでいる)
・審美眼を持っている人。
ロープライス品の扱いについては議論中。
ブランドイメージのなかに「かっこいい」という言葉を入れるかについては議論があった。
機能性に翻弄されるなかで、かっこいいものを作りたいという思い。
社員向けにブランドを整理することで、トータルコストの削減にも。
以上